黒い牛乳の著者、中洞正さんは、完全放牧の山地酪農家で、牛には交尾したいときに交尾させて、近代酪農の真逆をいく世界一牛に優しい方です。
講演会に行くと、「牛乳は体に悪い飲み物だとご存じだと思いますが、、、」から始まるそうです。
畜舎に閉じ込めて、遺伝子組み換えの小麦やトウモロコシ、大豆の絞りカスなどを与えられ(グレインフェッドという)、腸内フローラも悪くなり、リーキーガットになり、血中にガスなど悪い物質が漏れ出ている上に、血液が酸性に傾きがちで(ビタミン剤などは一応死なない程度にあげているみたい)すぐに死ぬ牛(グレインフェッドの牛の寿命は人間で言う20歳)の牛乳を体にいいと思って飲んでいる人が未だに多くいるので、牛からしたら迷惑ですよね。
一生運動や子育てのために子牛に牛乳を与えることもなく、ただ人間様のために狭い畜舎に閉じ込められ、そんな一生懸命絞ったものが、カルシウムとマグネシウムバランスが非常に悪く、骨への沈着、特に再石灰化を阻害するようなミネラル構成な上に、乳蛋白のほとんどを構成するガゼインが、リーキーガットを引き起こし、気付かないだけで、ほぼ全ての人に、遅延型アレルギーを引き起こすもととなっているのです。
世界で最も凶悪な殺人犯が閉じ込められている刑務所で、牛乳は体にいいものかという質問をしたところ、ほぼ全ての凶悪な殺人犯は、牛乳はとても体によく、進んで摂っているという答えが帰ってきたそうです。
僕の結論としては、そんな簡単に安価に摂れるものが、そんな都合よく美味しいだけでなく、体にいい訳がないということです。
乳牛一頭当たり、毎日300ml/人×100人を補える量を休む間もなく搾取されているのです。虐待です。牛乳は、学がなく自分さえ良ければいい人が飲む飲み物です。ノルウェーの人のように厳しい冬を越すのに、夏場太陽の光をたっぷり浴びた牧草を食べさせ、せっせと乳を絞り、夏の内にチーズを仕込んで生き抜くのとは、訳が違います。
ちなみにノルウェー人の骨折率は日本人の5倍です。
「放牧・パスチャライズ殺菌・ノンホモ牛乳」というのが、昔、近所の問屋で売られていました。
それは、今まで飲んでた牛乳は何だったのか?! というレベルで美味しかったのです。
「あの牛乳はなぜうまい?!」と思ってから十数年、この本と出会いました。近代酪農のシステムは、牛の生態を無視し、生産性のみを追求したのだそう。
自然の牧草を牛に食べさせていると季節によって乳脂肪分にばらつきがでるため、輸入飼料を一年じゅう食べさせる。飼料代も結構な金額になる。
少ない土地で、より多くの牛を飼うために狭い牛舎で運動不足のまま過ごす。掃除も大変。牛糞の処理も、結構な金額と手間がかかる。
なるべく多く乳を搾るために、人間が妊娠期間を決める。妊娠は人工授精。生まれた子牛と離されるのも即、もしくは早い。
不自然な環境で一生ストレスを感じながら、乳牛のほとんどは若くして死ぬ。その平均寿命は、人間の年にして20代くらいなんだとか。一方、著者の牧場・放牧を主とする「山地酪農」は、牛がノビノビと過ごす様子が伺えます。
放牧で牧草(冬は干し草)を食べているので、えさ代があんまりいらない。
山の中で走り回るので(二頭で一ヘクタール程度とか)体もたくましく健康。掃除の必要もなし。牛糞は牧草の肥料になるので処理の必要もない。
乳搾りのときは自発的に来る。来ない牛は放っておく、という方法もユニーク。
妊娠は自然受精。出産も子育ても牛たちがする。
生産は多くないもののコストも相当少ない。環境にも優しい。循環型で手間もいらない。
乳脂肪分にはばらつきがでるけれど、自然味ある美味な乳になる。
やっぱり、おいしいのが一番!!特に感銘を受けたのは、「性」としての牛の扱いでした。
近代酪農は、妊娠・出産はあるものの交尾と育児を奪い、搾取した大切な母乳を商品として叩き売る。牛の「性」としての自由と健康を蹂躙しておいて、「牛乳は体に良いから飲みなさい」では示しがつきません。
が、山地酪農の牛は、妊娠・出産はもちろん交尾も育児もちゃんとしている。性としての自由・尊厳が存在しているということ。
ここの乳牛たちは、恋をして(?!)母になっている。そんな牛乳を飲んだら、人間も幸せになれるかも?!
「性」の幸せという観点からも、自然な酪農という選択が大切になってくる気がします。良い農を支持することは、今すぐ簡単にできる環境保護活動。
身体に良く美味しいものは、少量でも満足感がある。素材の美味を味わいながら、環境にも良い選択をしたいと思いました。
最近のコメント